インサイダー取引は割に合わない


【質問】


 A社とB社が業務提携をすることになったという話を,A社に勤めている夫から聞いたので,業務提携のニュースが出る前にと,両社の株式をインターネットで購入しました。

 業務提携の発表後,両社の株価が高騰したので,翌日に売り抜けて,40万円の利益が出ました。

 株式取引としては少額ですし,この程度で,インサイダー取引として摘発されることはないですよね?


【回答】


 残念ながら,そのようにうまくいく可能性は高くないです。


【解説】


 インサイダー取引とは,上場企業の会社関係者または会社関係者から情報の伝達を受けた者が,株価に影響を与える重要な事実を知った上で,その事実の公表前にその株式を売買することです。

 インサイダー取引は犯罪として処罰されるほか,課徴金の支払いも命じられます。


 インサイダー取引の摘発を担当するのは,証券取引等監視委員会(SESC)ですが,SESCは,売買記録を分単位で把握できるほか,証券会社から顧客の売買明細を入手し,取引者のパソコン,スマホや携帯電話の通信履歴などをすべて調べ上げることもできます。

 例えば,取引の前後に該当会社のサイトを閲覧していたといった事柄も分かってしまいます。

 おまけに,SESCの人員も,1998年の220名余りから2014年の700名強へと,年々増員され,監視体制は強化される一方です。


 したがいまして,例え少額といえども,SESCの監視を免れることはできないと考えた方が良いでしょう。

 先日も,SESCは,インサイダー取引で44万円の利益をあげた会社員に対して課徴金納付命令を出すよう,金融庁に勧告したばかりですし,数十万円の利益といえども見逃さないのが,今のSESCの態度だと言えます。


 インサイダー取引は,犯罪であるばかりか,経済的にも割が合いません。

 「濡れ手に粟」みたいな態度は捨てた方が賢明です。