経営革新等支援機関になる弁護士は意外に少ない

 中小企業庁は,「経営革新等支援機関」として,10,000万機関程度の認定を考えているようである。

 現在,そのうち,8,165機関が認定されている。

 

 では,そのうち,弁護士はどれぐらいいるのか。

 はっきり数えたわけではないが,おおよそ,700機関程度ではなかろうか。

 弁護士は,全体で,3万人以上はいるのだから,思ったより少ない。

 残りの大半は,税理士または公認会計士である。

 

 では,どうして,これほどの差が出たのか。

 以下,ある税理士事務所で聞いた話である。

 

  • 税理士業界には,TKCという,超強力な組織がある。
  • 経営革新支援等機関制度の立ち上げには,TKCからの働きかけがあったであろう。申請書類の書式を作成するのにも,個々の税理士が簡単に申請できるよう,TKCの関与があったであろう。
  • 税理士会では,昨年から,経営革新等支援機関への認定を申請するよう,積極的な告知がなされていた。

 つまり,税理士会は,動きが早かったということだ。

 翻って,日弁連はどうだったか。

 

  • 昨年,日弁連が,経営革新等支援機関への認定を申請するよう,広く弁護士に呼びかけたという話は,聞かない(後で分かったのだが,昨年秋頃から,日弁連でも呼びかけを始めてはいたのだが,少なくとも,私のような末端の会員までは届いていなかったらしい)。
  • 私の元にも日弁連からの呼びかけFAXや電子メールが届いたのは,今年の2月になってからである。その頃,既に,弁護士と税理士との間では,登録された機関の数について,約10倍の差が開いていた。

 

 つまり,各会員への情報提供の周知徹底という点で,日弁連は遅れを取っていたということだ。

 

 だからといって,日弁連が怠慢だったかというと,そんなことはない。

 私が見聞した範囲では,職員も,日弁連の仕事をしている弁護士も,みな優秀で,働き者だ。

 今は東京電力の取締役会長となっている弁護士は,2007年4月から2008年3月まで,東京弁護士会会長と日弁連副会長を務めていたが,その弁護士は,在任中,朝5時過ぎには出勤していたらしい。

 

 ただ,弁護士の組織は,運営規則上も,実際の風土においても,ボトムアップ型で動くようになっている。

 つまり,何か意思決定を行う場合,下から順次意見を集約し,それを踏まえて最終決定するパターンが多いので,トップが独断で動くのにも限界がある。

 

 これは,「基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする」(弁護士法1条1項)弁護士の使命からして,仕方ないと言える。

 が,その結果,今回のように,他の仕業団体に後れを取ることもあるわけだ。

 

 「経営革新支援等機関」の募集が打ち切られた段階で,

 最終的に,弁護士の「機関」はどの程度になるのだろうか。