本「金融円滑化出口戦略」を読む(1)

リーマンショック後の2009年9月、中小企業の借金と世帯の住宅ローンの返済・利払いを延期し、金利を減免するための政策として、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(金融円滑化法)が成立した。

 

金融庁の発表によると、金融円滑化法の適用による貸出条件変更状況は、2012年3月時点で、約310万件・債権額86兆円の申込に対して、290万件・債権額80兆円について貸出条件が変更されたというから、多くの中小企業が金融円滑化法の恩恵を受けたと想像できる。

他方で、返済に目処が立ったことを理由とする取下げの申込みに対する割合は1%程度に留まるとされており、金融円滑化法施行によっても、中小企業等の資金繰りが抜本的に改善されたとは言えない状況にある。

 

金融円滑化法は、2011年3月までの時限立法として施行され、その後、2012年3月まで1年間延長されたが、今のところ再延長の予定はなく、来年3月で廃止される見込みである。貸出条件変更先の多さからすると、金融円滑化法廃止によって経営に多大な影響を受ける中小企業等が多く発生すると予想できる。

 

そのせいか、最近、弁護士会館の中にある書店で、金融円滑化法に関する本をよく見かけるようになったし、東京商工会議所でも、金融円滑化法の廃止後を見据えた事業再生セミナーが実施されるなど、「金融円滑化法後の世界」について、関心が高まりつつあるようだ。

 

というわけで、私も、関連本の中で一番ページ数が多かった、「金融円滑化出口戦略」という本を買って、読んでみた。

これからしばらくの間、債務者にとって役に立つと思われる箇所を中心に、本書の内容を紹介していきたいと思う。