将棋との出会い

唐突だが、私は将棋が好きである。

私の今の将棋ライフは、以下のような感じだ。

 

  • 用事が入っていない限り、日曜日のNHK将棋杯は見逃さない。
  • 少し大きい本屋に入ったら、将棋書コーナーを必ずチェックする。気に入った本で電子書籍化されているものがあれば、「将棋ブックス」でダウンロードしておく。
  • 毎日、プロ棋士の対局を「将棋連盟Live中継」でチェックする。
  • 雑誌「将棋世界」で紹介された棋譜は、実際に将棋盤を使って並べてみる。

 

今のところ、「週刊将棋」を定期購読したり、タイトル戦の大盤解説会を観に行ったりするには至っていないが、

上に説明した将棋ライフからすれば、将棋ファンを名乗ってもおかしくはあるまい。

 

このように、今では将棋ファンを公言している私だが、最初からずっとそうだったわけではない。

そうなるまでには、長い歴史があった。

 

将棋を覚えたのは小学校3年生か4年生の頃。

友達に教えてもらったのだが、その友達には全く歯が立たなかった。

それだけでなく、自分が将棋のルールを教えた弟にも、すぐに負かされるようになった。

 

「自分は、将棋が弱いんだ」

 

早々とそのような結論を下し、いったんは将棋を封印した。

 

その将棋と再び関わるようになったのは、祖父の家に遊びに行った際、

家に置いてあった雑誌「将棋講座」を見つけてからだった。

 

当時の講師は田中寅彦九段で、付録として、(故)森安秀光九段による自戦記式の次の一手問題集が付いていた。

森安九段は四間飛車使いだったので、問題も四間飛車ばかりだったのだが、

当時の私にとって、

「将棋にも、戦法があるんだ。定跡というものがあるんだ。」

というのが、大きな驚きだった。

 

そこで、将棋講座を毎月購入し、繰り返し繰り返し読んでいるうちに、将棋が面白く思えてきた。

そして、久しぶりに友達や弟と将棋を指してみると、面白いように勝てるようになった。

 

子供の集中力というのは恐ろしいものである。

それ以来、将棋の本を片っ端から読み込み、周りで将棋が一番強かった祖父にも勝てるようになった。

(多分、当時の祖父の棋力は、初段ぐらいだったと思う)。

 

子供の無鉄砲さというのは恐ろしいものである。

何と、当時、中学生になっていた私は、

「プロ棋士になりたい。奨励会の入会試験を受けたい。」

と言い出したのである。

 

当然、世間の厳しさを知っている父母は、猛反対した。

が、当時の私は、頑として意見を変えない。何しろ、子供は怖い物知らずである。

 

そこで、父は一計を案じた(のだと思う)。

知り合いのつてを頼ったのだろう、ある日、「将棋を指そう」って、知らないおじさんが家にやってきた。

もちろん、私は、喜び勇んで将棋を指すも、いつもと勝手が違う。

何回指しても、そのおじさんには勝てなかった。

 

このとき、私はさとった。

 

「このおじさんにすら勝てないようじゃ、プロにはなれない。少し将棋が強くなったからって舞いあがっていた自分が恥ずかしい。」

 

そこで、再びきっぱりと、将棋を封印した。

このときは、まさか自分が、再び将棋にはまるとは思わなかった。

 

(続く)